金田一春彦ことばの学校

第六回 ことばの学校

日  時 

平成17年10月1日・22日/11月13日・19日

会  場 

本校・長坂分校…長坂コミュニテイステーション
小淵沢分校…小淵沢町生涯学習センター
高根分校…高根町農村環境改善センター
特別授業…須玉ふれあい館

参加人員 約260名

テーマ「金田一 春彦その歌とことばの世界」

金田一春彦ことばの学校 第六回

 
 

 
学校の顔でもあった 校長の金田一春彦先生が亡くなって1年。
寂しさの中にようや く落ち着きを取り戻した私たちだったが、
昨年に引き続いて各分校の開催日をずらし て、 希望する人はどれにも参加できるように計画され、好評であった。
 
昨年の秋には、 小淵沢を除くこの地域の合併により北杜市が誕生。
市の後援も得て、ますます活発な ことばの学校となった。

 
 
 
 
 



■1 開校式挨拶  芳賀 綏

  •  「ことばの学校も回を重ねて地域に定着し、全国にも広く知られるようになってきた。こよなく
  • この地を愛し、歌とことばの世界を深められた文化功労者、金田一博士のお気持ちを生かして学校をますます発展させていきたい」と熱い思いを語った。

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■2 秋の日のコンサート
   「日本歌曲振興会 新・波の会」(社団法人)

  •  金田一春彦氏もこの会の発起人の一人であったが、詩人、作曲家、声楽家たちによる(詩、作曲、声楽の)創作歌曲の会「新・波の会」が出演。金田一春彦氏の作曲「白いボート」など六つの歌、同じく作詞の「甲州峠唄」など三つの歌、訳詞の「四つ葉のクローバー」など三つの歌、さらに作詞作曲の「大泉讃歌」の計13曲が華やかに披露された。 音楽家を志そうとしたこともあったと言う氏の面目躍如たるコンサートであった。

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■3 講演「発音の面から見た日本語」  
    城生佰(筑波大学大学院教授)

  •  「話し言葉といわれるのが音声言語であり、それに対して文字言語がある。ソシュールは、音声言語が本質的なものであり、文字言語は二次的言語であるといっている。音声言語は情報量が多く、その時空間の中での一過性のライブであるといえる。
  •  音声言語を捉えるための最も重要な要素として、アクセント、イントネーション、ポーズ、リズム、発話速度、音節などがあり、これらをプロソデイー(非分節音)というが、言語の習得はこのプロソデイーの習得から始まる」と日本語の音声に焦点を当ててわかりやすいという。特に印象深かったのは、タモリの「空耳アワー」を例にとった話。アメリカ人、フランス人、ドイツ人、中国人がマージャンをしている様子をタモリが面白おかしく演じると、メチャメチャなことばなのにそれらしく聞こえる。私たちがいかにことばをそれらしい雰囲気だけでとらえているかの例として紹介し、音声言語の特質を語った。

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■4 方言川柳表彰式

  •  今年の題は「出会い」。子どもの部では友達との出会いを歌ったものが多く中沢先生の選は「言っちゃえし出会った時のその気持ち」、大人の部は「初めましてぼこにおっぱい迸る」と、我が子誕生という出会いをとらえたものであった。
  •  玉島先生は子どもの部に「出会いとは自分を変えるチャンスずら」、大人の部に「友情に出会いビクッチョ立ち直り」を選ばれた。友達との出会いを機に自分を変えていくという心の機微がよくとらえられている。

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■5 鼎談    
    金田一真澄 金田一秀穂 田中美奈子

  •  金田一春彦先生が亡くなって1年。私たちにとってもご家族にとってもあっという間の1年間だった。先生の長男の真澄氏、次男の秀穂氏、長女の美奈子氏が父の春彦を偲んで、思い出を語った。真澄氏は祖父、京助氏との比較で父を見ている。いかにも学者らしく、清貧に甘んじながら研究一筋だった祖父に比べて、春彦氏はまず家族の生活の安定を考えるタイプ。それが時に世俗的という批評も受け、自分も昔は父の偉さが理解できなかったという。秀穂氏は自分もまた父の跡をついで国語の道を進んだ不思議な巡り会わせを語り、「父が生きているうちに一緒にテレビに出てあげたかった」と言う。美奈子氏は父が意識を失う最期のときにたまたま八ヶ岳の別荘で一緒に居合わせた話をして、「今でも父の魂はきっとあの家の空にとどまって私たちを見守っているような気がする」と語る。学者一家の知られざるエピソードに、子を想う父の像が浮かび上り興味はつきなかった。

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■6 小淵沢分校 会場:小淵沢町生涯学習センター

  •  テーマ:「語り継ぐ甲州の暮らしとことば 」
  •  第一部は講演「八ヶ岳南麓-江戸時代の日々の暮らしと文化」について山梨県立大学非常勤講師の宮澤富美惠さんが豊富な資料を基に話され、第二部は「屁っこき嫁」(甲州弁)を、人形劇団こんぺいとうが上演した。第三部は地元の皆様のおふるまいで、小淵沢の山の幸を味わい、お楽しみ口演として茅野頼母さんが「雷さんのお話」を語るなど、心なごむ会となった。

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■7 高根分校 会場:高根町農村改善センター

  •  第一部は「“美しいことば”は存在するか」についてエッセイストの武田秀夫さんが、ことばに
  • よって勇気を得たり元気をもらったりするような経験をふまえて、生き死にのギリギリのところで人を支え、感動させる“美しいことば”について語った。第二部は「響きあう音とことば~金田一春彦作曲の歌~」をオオムラサキ少年少女合唱団の演奏で聞き、第三部は「朗読-語り継ぐことば」
  • を3部構成で展開。
  •    1.日本昔話「つるの恩返し」
  •    2. 金田一春彦著作集より「その一言」「平家琵琶」
  •    3.『平家物語』より「祇園精舎」「敦盛最期」
  • など何篇かを群読で、古典音楽の演奏とともに味わうという試みであった。軍記物語のことばのリ
  • ズムが勇壮に、また哀調を帯びて響き、平家の世界を浮かび上らせてくれた。
  •  出演は北杜邦楽愛好会、朗読の会「ななつぼし」「コスモス」の皆さん

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■8 特別授業 会場:須玉ふれあい館

  •  第一部は講演「日本語の豊かさ」を奈良県立万葉文化会館館長の中西進氏(作家・日本ペンクラブ副会長)が、金田一先生の思い出話からはじめた。授業の中味よりも、ご自分の綽名の紹介が学生に親しみを持たせたと、“6時5分前”を紹介。ちょっと首をかしげた立ち姿の形容とのこと。自称“万葉大好きおじさん”の中西氏は「万葉未来塾」で小学生と万葉集を読んでいるが、古典を読んで語源を考えていくと、日本語の身体表現が植物の生命力と深く関わっていることに気づくと、目と芽(生命活動の初め)、歯と葉(末端に並んで生命活動を支えているもの)などの語を例にあげて熱弁をふるった。
  •  第二部は朗読「女の一生」(森本 薫作)を川辺久造さん(文学座俳優)と松下砂稚子さん(文学座俳優)のご夫妻が、芝居の一場面さながらの舞台装置で語られた。